○委員(土屋準君) 民生費におきましては、初めに、婚姻時の支援についてお伺いしたいと思います。まず、夫婦の不仲と児童虐待についてです。18世紀ドイツの物理学者、ゲオルク・クリフトフ・リヒテンベルクという人の言葉なのですが、「恋は人を盲目にするが、結婚は視力を戻してくれる」という言葉があります。結婚を機に独身のときとは違う段階に入るということを、よく示唆しているのではないかと思います。私は、婚姻時にどのような支援をするかが、その後の夫婦関係ですとか、あるいは親子関係に大きく影響してくるのではないかと思っています。
今回の新型コロナウイルス感染症が家庭に及ぼした影響は大きいと言われていまして、家庭というものを改めて見つめ直す機会になったと思います。ステイホームにより、これまでとれなかった家族と過ごす時間ができたという声もあれば、老後の生活を今から見ているようだといった声もあります。また、家庭内暴力が生じた家庭もあります。昨年10月に報道されたNHKのデータによりますと、児童・生徒の自殺者数は、平成20年度には137人であったのが、平成30年度には332人と大幅に増加しています。また、同じく昨年10月に毎日新聞が報道したデータでは、自殺した児童・生徒の状況の内訳が出ていますけれども、一番多かったのは家庭不和の41人、次に、父母などの叱責30人などとなっていまして、学業や進路や友人関係、いじめなどは、それ以下となっていたということです。しかも、この2つの割合は、平成18年は7.6%だったのが17.1%に増加しています。ここから、親子関係や、親である夫婦の不仲を含む家庭不和が大きな原因になっていることが考えられます。また、子どもの面前で親である夫婦が争うことや、DVを行う面前DVは、子どもの性格形成に影響を及ぼすと言われています。子どもの心身の問題の背景に、両親の夫婦関係の問題が隠れていることは、珍しくないようであります。
そこで、お伺いしますが、近年の虐待の状況はどのようなものでしょうか。その中で面前DVの状況はどのようなものがあるでしょうか。
○子ども家庭支援センター所長(安達佳子君) 港区の児童虐待相談件数は、平成27年からの5年間で1.5倍に増加しています。昨年度受け付けた児童虐待相談の内容としては、心理的虐待は305件、身体的虐待は252件、ネグレクトは188件となっております。面前DVは心理的虐待にあたり、令和元年度の心理的虐待は前年度と比較して約1.8倍に増加しております。特にコロナ禍の外出自粛期間中においては、家庭に長くいることで夫婦関係や親子関係が悪化したという相談が多くありました。例えば、家での飲酒が増えたことで酔って口論となり、夫婦の衝突が暴力に発展してしまったケースが見受けられました。子どもの前での夫婦げんかは、子どもの不安を大きくし、成長や発達にさまざまな悪い影響を与えます。子どもは、自分に原因があるのではと考えるようになり、自己肯定感が低くなり、長期的なケアが必要になると言われています。
○委員(土屋準君) やはりいろいろな問題が増えているようでございます。次に、婚姻届提出時の取り組みについてお伺いします。私は、夫婦関係の問題の対策には予防の観点が必要で、親になってから始めるのでは遅いのではないかと考えております。そうすると、家庭出発の時点すなわち婚姻届を提出した時点に行えないかと思っております。私は、以前、これから家庭を出発するという喜びや重みを感じたり、決意をする機会になるのではないかと思い、オリジナル婚姻届を作成してみてはいかがかという質問をいたしました。その際の答弁は、「届け出をより思い出深いものにする効果があり、有意義な取り組みと考えている」ということでした。こうした新たに家庭を築くタイミングを捉えて夫婦関係について考えてもらうことは、有益な方法ではないかと思っております。神奈川県では、幸せな家庭を築く夫婦のコミュニケーションという冊子を作って、婚姻届提出時などに渡しているそうです。この冊子では、自分も相手も大切にする自己表現、アサーションなどについても取り上げられていて、例えば、怒りをテーマにした節がありますけれども、「怒り、最も厄介な感情」というタイトルで、怒りの本質、怒りの感染力、相手の怒りへの対処、自分の怒りへの対処などが述べられています。これは心理学の先生が書いていまして、夫婦関係だけでなく、ほかの人間関係にも応用できるのではないかという内容でございます。
私は、このような冊子を配付するだけでも効果はあると思いますが、さらに一歩進めて、冊子を配付するだけでなく、こうした内容で講習をするのもよいのではないかと思います。ただ、婚姻届を提出する時点ではまだ視力が戻っていないかもしれませんので、インセンティブが持てるように、講習修了者に結婚祝いを出すという方法も考えられるのではないかと思っております。そこで質問ですが、婚姻届け出時にこのような冊子を配付する、あるいは講習修了を要件に結婚祝いを出すことも検討してみてはと思いますが、いかがでしょうか。
○子ども家庭課長(野上宏君) 以前、家庭相談に訪れた方から、離婚後の支援だけではなく、婚姻中の段階で夫婦仲を維持できる支援はないのかといったお尋ねがありました。その際は御紹介できる区の支援はなく、御期待に添うお答えができませんでした。土屋委員が御紹介されました神奈川県の冊子、私も拝見しました。夫婦のコミュニケーションの大切さや、そのためにやるべきことの多さに、今さらながら驚愕しております。夫婦関係を維持するためのノウハウについて、いつ、何を、どのようにお伝えするか、確実にお伝えするためのインセンティブはどのようなものがよいか、先行自治体の事例を参考にしながら、区民の皆さんがよりよい夫婦関係、家族関係を築くための支援について検討してまいります。
○委員(土屋準君) ぜひ、よろしくお願いいたします。コミュニケーション力は子育てに似ているとも言われます。子育てに通じるものがあるのではないかと思います。「男女は相対的発達障害であり、互いを必要とし生かし合うものだ」と言う人もいます。男女が夫婦になったとき、その障害が克服され、幸せな家庭を築いていければと思います。子育てをするなら港区と言いますけれども、幸せな家庭を築くなら港区にもなっていけばいいと思いますので、よろしくお願いいたします。
次に、子育て・家庭の相談支援の拡充の取り組みについてお伺いします。ここでは、最近取り入れられている子育てや家庭の相談支援に関する取り組みの拡充や、体制の工夫についてお伺いいたします。まず、インターネットを活用した相談支援の拡充の取り組みについてです。区では、平成26年から、子どもを対象にしたみなと子供相談ねっとを開設し、携帯電話、スマートフォン、パソコンから相談できる取り組みを行っています。一方、親にとっても、ようやく子どもが寝静まって、子育てについて何か相談しようと思っても夜遅くなってしまうということも、よくあることだと思います。そんなとき、インターネット、メールなどで相談できれば、心強いのではないかと思います。こうした中、区ではこのたび、港区おとなの子育て相談ねっとを新たに開始しました。そこで、港区おとなの子育て相談ねっとを活用した親の相談支援について、どのように考えているか、お伺いします。
○子ども家庭支援センター所長(安達佳子君) 仕事や家事、育児に忙しい子育て家庭の親にとって、受付時間が限られる日中の相談窓口や、あらかじめ電話予約をする心理相談などは、相談したいと思っていても、その機会を逸してしまうことがあります。新たに開始した港区おとなの子育て相談ねっとでは、身近なスマートフォンやパソコンから簡単にアクセスすることができるため、いつでも相談できる利点があります。9月1日から開始し、現在16件の相談があり、60回ほどのやりとりを行っており、匿名で相談できるとともに、電話のように声を聞かれることがないため、相談したくても自分の身元を知られることに抵抗がある親にとっては、気軽に相談できるよさがあるようです。港区おとなの子育て相談ねっとを活用した親の相談支援は、これまで悩みを抱えていてもなかなか相談できなかった子育て中の親がメールで相談を重ねることによって、この人なら電話で話してみたい、こういう人なら会って相談してみたいと、徐々に相談者との距離を縮めるきっかけになり、本当に支援を必要としている親に支援が届けられることで、児童虐待の未然防止につながる多様な支援策の1つと考えております。
○委員(土屋準君) ぜひ、こういったものをよく活用して、相談支援をしていっていただければと思います。
もう一つ、家庭相談支援についてお伺いいたします。区では、子ども家庭課内に港区家庭相談支援センターを設置し、配偶者等からの暴力被害の相談を受けるほか、家庭内で発生する夫婦、親子、嫁姑や、結婚・離婚等の問題をはじめ、職場の人間関係などについても相談を受け付けてきました。一方、区では、今年度から会計年度任用職員として家庭相談支援員を採用し、相談支援等にあたっています。そこで、これまでの港区家庭相談支援センターの課題をどのように考え、家庭相談支援員を活用して今後どのような相談体制をとっていくと考えていますか、お伺いいたします。
○子ども家庭課長(野上宏君) 昨年までの港区家庭相談センターは、業務委託により運営を行っておりました。近年は相談内容の複雑化、多様化が進み、DV防止法や児童虐待防止法などの改正により、相談者に寄り添った一層丁寧な支援が求められています。相談の解決にあたっては、庁内のみならず警察や弁護士など他機関との連絡調整も増加しており、業務委託による運営では、臨機応変さに欠けるとともに、対外的な交渉には委託事業者ではなく職員の関与が強く求められるなど、従前の執行体制には多くの課題が生じておりました。そこで、令和2年度から、社会福祉や心理などの専門知識を有する会計年度任用職員による執行体制に改め、担当係長の指揮のもと、1つ1つの相談に丁寧かつ適切に対応できるよう、体制の強化を図りました。令和3年度には、子ども家庭支援センターへの移管を予定しており、子どもと家庭の総合的な相談窓口として、これまで以上に関係機関や地域と連携しながら、相談者の抱える問題に寄り添った相談体制の充実を図ってまいります。
○委員(土屋準君) ぜひ、そういった新たな体制でこれからも家庭相談支援を充実していっていただきたいと思います。よろしくお願いいたします。
次に、保育士体験についてお伺いします。まず、中学生等の保育士体験についてです。私たちは知識を学ぶことはあっても、親になることの学びというものに触れる機会はなかなかありませんでした。私は、そのような機会がないまま親になることが、虐待などを妨げられない原因になるのではないかと考えております。それでは、その学びはいつから始めたらいいのかと言うと、早いほうがいいと思っております。私は、以前、芝地区総合支所で行われていた「未来の親体験・ここから始まる赤ちゃんふれあい事業」について取り上げました。これは、乳幼児とその母親たちが中学校等を訪問し、実際に乳幼児と接する機会を作ることで、親になることをイメージできるような仕組みを作るという内容でした。参加者の反応も大変よかったようでしたので、私はこれを芝地区だけでなく、もっと全区的に拡大できないかと提案したところ、平成30年度からは教育委員会の事業として引き継がれまして、昨年度には地域・学校協働活動推進事業の一環として実施されました。今度は逆に中学生等が保育園に行って保育士体験をすることで、親になることの学びにつなげられないかと思っております。そこで質問は、現在このような中学生等による保育士体験はどのようにされていますでしょうか。また、今後の実施はどのように考えていますでしょうか。
○保育課長(山越恒慶君) 区立保育園では、現在、区内の中学校の職場体験として毎年生徒の受け入れを行っております。学校ごとに数名、希望する保育園に2日間通い、保育士の仕事を実際に体験し、保育士等と意見交換することで、保育の仕事についての理解や関心が高まっています。園児と触れ合う中では、かわいさだけでなく、思いどおりにいかない経験や、相手に合わせてお世話をすることで親の大変さを感じたとの感想も聞かれております。また、中学生ならではの視点や、将来保育士になりたいとの声をいただくことは、職員にとっても新たな気づきや励みになっております。何よりも頼もしいお姉さんやお兄さんと触れ合うことは、園児にとって貴重な経験となっております。こうした取り組みはお互いに有意義なものであり、今後も積極的に取り組んでまいります。
○委員(土屋準君) ぜひ、積極的に取り組んでいっていただきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
もう一つ、保護者の保育士体験についてお伺いいたします。保育の現場を子どもたちが安心して過ごせる環境にするには、親と保護者が一緒に子育てをしている実感を持つことが有効だと思います。親が1日保育士体験をすることは、保護者、保育園、子どもたちにとって、それぞれに効果があることだと思います。親にとっては、我が子の家庭での様子と違う面を見つけたり、ほかの子どもたちも一緒に成長していることに気づくこともあり、保育園に対する感謝の気持ちを持ち、保育園との関係も良好になることが期待されると思います。保育園にとっては、第三者の目が入ることになり、業務改善につながると思います。子どもたちにとっては、今日は◎◎ちゃんのママが1日先生だとか、◎◎ちゃんにこういうお父さんがいるんだとか、困ったときはお友達のお父さんが助けてくれるかもしれないなどと、多様な人と触れ合うことの楽しさを感じることは、いじめ対策にもつながるかもしれません。
そこで質問は、現在このような保護者による保育士体験はどのようにされていますでしょうか。また、今後の実施はどのように考えていますでしょうか。
○保育課長(山越恒慶君) 区立保育園では、年に1回、在園児の保護者にお子さんのクラスで保育に参加していただく保育士体験を実施しております。お子さんの年齢により体験方法は違いますが、特に幼児では、遊びや給食の場面をクラスの子どもとともに過ごすことで、我が子の成長を実感するだけでなく、子どもの多様性や成長の過程に気づき、保育士の姿から、子どもへの接し方や育児のヒントを得ることができると喜ばれております。子どもたちは、自分の両親や保育士以外の大人であるパパ先生・ママ先生と過ごす楽しい経験をすることで、人への親しみや信頼感を深めております。保育園にとりましても、保護者と子どもの育ちを共通理解する機会となり、より豊かな保育環境の構築やスキルの向上につなげております。今後も参加しやすい日程や実施方法を工夫しながら、保育園と保護者の信頼関係が築ける絶好のチャンスとして保育士体験を継続してまいります。
○委員(土屋準君) ぜひ、いい機会になると思いますので、これからもよろしくお願いいたします。
次に、保育園入園予約についてお伺いいたします。区では、年度の途中に育児休業からの復職を予定している保護者の方が安心して復職ができるよう、保育園の育児休業明け入所枠を実施しています。今年は60人の枠に対して多くの申し込みがあり、入所予約枠が2名のところ10倍の申し込みがあった保育園もあったと聞いています。区では、新型コロナウイルス感染症の感染拡大防止のため、育児休業からの復職の期限を令和3年1月末まで延長しています。子どもが1歳になるまで、できるだけ育児休業を取得したいと考える保護者は、今後さらに増えていくのではないかと思っております。
そこで、まとめて質問します。1点目が、この育児休業明け入所予約制度には、どのような狙いや効果があると考えているか。昨年6月27日に、港区子ども・子育て会議から、令和2年度からの港区子ども・子育て支援事業計画の策定にあたっての意見について答申がなされています。その中で、子どもの生まれた月や育児休業の取得期間が保育園入園で不利にならないよう、入所予約制度の見直しを行うとの答申がされております。来月からは令和3年度の保育園入園の御案内が区ホームページに掲載される予定であり、令和3年度の入園の申し込みも間もなく始まる時期となりました。
そこで2点目の質問は、育児休業明け入所予約についても今後充実していく必要があると思いますが、区ではどのように考えているのかお伺いいたします。
○保育課長(山越恒慶君) 初めに、狙いや効果についてです。保育園の0歳児クラスの4月入園の申し込みでは、1月~3月に生まれたいわゆる早生まれのお子さんは二次選考からしか申し込みができず、さらに4月時点で入所可能月齢に達していない場合は、たとえ希望する保育園であっても入園の申し込みができないこととなっております。また、多くの方が育児休業からの復職を前提として申し込みをされており、入園した4月に復職しなければならないこととなります。育児休業明け入所予約制度により、お子さんが満1歳になるまで保護者が安心して育児休業を取得することができるほか、早生まれのお子さんが希望する保育園に入園できる機会が増える効果があるものと考えております。
次に、令和3年度以降の定員についてです。区では、保護者が安心して育児休業制度を利用できる環境を整えるため、0歳児クラスの定員の多い区立保育園や、港区保育室を中心に、各園の入所予約の定員を拡大し、令和3年度の育児休業明け入所予約の定員を全体で100人程度確保してまいりたいと考えております。