○二十三番(土屋準君) 令和五年第三回港区議会定例会に当たり、自民党議員団の一員として、区長、教育長に質問いたします。
初めに、特別区制度と都区財政調整についてです。
まず、都区の在り方についてです。今年は、東京都制八十年の節目の年です。第二次世界大戦下の昭和十八年七月一日、戦時体制の強化のために東京府と東京市とを合併し、東京都が設置されました。東京の区は、当時は三十五区ありましたが、戦後二十三区に再編されました。その理由は大きく二つ、戦災によって各区の人口が大きく減ってしまい、損害状況も区ごとに大きく差があったこと、地方制度が改正されて自治権が拡充されたため、各区の区制の基盤を強固にする必要があったことと言われております。
特別区の歴史を振り返ってみますと、そもそも東京の区は、東京都設置から遡ること六十五年、明治十一年に芝区、麻布区、赤坂区など十五区が設置されたことに始まります。ちなみに東京の区は、その後、様々な変遷をたどることになりますが、翌年開設された公選の議会は、途絶えることなく今日まで引き継がれ、東京大都市地域の基礎的な自治体の機関として機能し続けています。
港区は、昭和二十二年に、芝区、麻布区、赤坂区の三区が統合されて発足したわけですが、当初、三区の区会は、この統合議案を、民情の相違が著しいなどとして、いずれの区も否決し、当時の東京都長官が再議に付してようやく可決し、港区誕生となりました。その後、区長公選の廃止とその復活、平成十二年の都区制度改革等の先人たちの自治権拡充の歩みの歴史を経て、今日の姿となっております。
平成十二年の都区制度改革は、未完の都区制度改革と言われ、その後も検討が続けられていますが、区域の在り方について、東京都が事務配分の検討と区域の在り方はセットとしているのに対し、区側は区再編の問題は自らの在り方を構築する中で主体的に判断するものとして議論がかみ合わず、平行線になっているとのことです。
児童相談所の移管については、他の議論とは切り離して行うとされたため、順次各区に移管されることになっており、港区においても令和三年に児童相談所が設置されましたが、都区の在り方に係る議論、協議は、児童相談所の移管を除き進んでいません。
そこで質問は、東京都制八十年の節目の年、こうした問題の解決を含め、都区のあり方検討委員会を再開し、都区の在り方に係る議論、協議を活発化させるべきと考えますが、区長の考えをお伺いします。
次に、都区財政調整制度における都区間の配分割合についてです。都区財政調整には、東京都と特別区間の調整と、特別区間の調整があります。この特別区間の調整により普通交付金が交付されておりますが、港区は特別交付金の交付はあるものの、算定の結果、毎年、普通交付金は不交付となっている唯一の区です。
一方、都区間の配分割合については、児童相談所が区に設置された初年度となる令和二年度に区側の配分割合が〇・一%引き上げられ、五五・一%となっています。港区を含め児童相談所設置の先行四区の決算が明らかになった令和四年度に行った都区財政調整協議会では、都区双方の主張が平行線で年度内に都区間の合意には至らず、今月十九日開会される都議会において、単位費用や新規算定の内容を盛り込んだ条例の改正が提出される見通しとのことです。
年度内に合意に至らなかったのは、過去の一番近い例でも昭和五十四年度の財政調整協議で、第二回定例会まで延長して以来という状況であり、今年は近年にない異例な事態です。特別区においては、葛飾区が十月に児童相談所の開設を予定しており、今年度中に児童相談所の設置区は八区となるなど、児童相談所の開設は着実に進んでいます。
また、今定例会には、児童相談所の設置区における措置費共同経理課の共同設置に関する協議が議案として提出される予定となっています。児童相談所の設置区がそれぞれの区域においてしっかりとその役割を果たしているということは、区の児童相談所を見れば明らかです。
そこで質問は、都区間の配分割合についての協議はこの間も継続してきたと思いますが、配分割合の変更の協議が整わないことで都区財政調整制度上どのような課題が生じているのか、区長の考えをお伺いします。
次に、みなと芸術センターについて一問お伺いします。
今年の第一回定例会の議決を経て、港区立みなと芸術センター条例が制定され、指定管理者の選定を行う段階になりました。みなと芸術センターの運営方法については、指定管理者制度を導入し、区民にとって最適な事業者とするために非公募により指定管理者候補者を選定するとのことです。
港区指定管理者制度運用指針によれば、指定管理者の募集は、原則として公募で行うものとしていますが、施設の性格や設置目的等から、特定の事業者に管理を行わせる明確な理由がある場合には、公募によらず、特定の事業者を指定することができるものとするとされています。よって今回、非公募により選定するというのは、特定の事業者に管理を行わせる明確な理由があると区が考えているのだと思います。しかし、区民にとって最適な事業者とするためにであれば、むしろ公募により選定するというほうが適切だと思われます。公募してみて、応募する事業者がほかになければ、結果的に一者になりますが、それでも適切な選定をしたということになるからです。
そこで質問は、どうして指定管理者候補者を非公募により選定するのかお伺いします。
次に、今後の結婚支援についてお伺いします。
東京都は、全国に比べ晩婚化や未婚化が進んでおり、中でも港区は、平均初婚年齢が二十三区で最も高い状況であったことから、区では、平成二十八年から出会い応援プロジェクトを実施してきましたが、結婚まで至った例はなく、令和二年度で廃止になりました。昨年は、民間のブライダル関連事業者と連携し、「ウエディングするなら港区 結婚応援フェア」が開催されていますが、より効果的な若者の結婚支援を図ることが求められています。
結婚支援には様々な形があり、以前も取り上げましたが、国が支援に力を入れた人工知能、AIやビッグデータを使った自治体の婚活事業といったものもあります。これは、AIが性格や価値観など、より細かく膨大な情報を分析し、本人の希望に限らずお薦めの人を選び出し、相性のよい人を提案するものだそうです。これが進むと、これまでのたまたま職場が同じだったとか、知人の紹介で知り合ったという人間の狭い行動範囲での結婚の形が、これからはAIが世界中から相手を探してくるという形に変わるかもしれません。このように結婚支援には様々な取組が考えられます。
そこで質問は、今後の結婚支援についてどのように考えているのか、お伺いいたします。
次に、夫婦になる学び、親になる学びについてお伺いします。
以前にも取り上げましたが、私たちは知識を習得する教育は受けてきても、夫婦となる学び、親になる学びは、なかなか受けてきていないのではないかと思います。そうした学びがないので、結婚するのをためらったり、親になってもどうしたらいいのか分からないので、子どもを持つのをためらったりする人もいます。また、そうした学びがないまま夫婦になり、親になることで、配偶者間暴力や児童虐待などが起きてしまうということが考えられます。問題が起きてから対処するだけでなく、問題が起きる前に予防することが大切なのではないかと思います。経済的な支援や物質的な支援はできるだけ行えばいいと思いますが、数値では示せない本質的な支援も重要だと思います。
そこで、まず、家庭内コミュニケーションの啓発についてお伺いします。私は以前、神奈川県で婚姻届提出時などに渡している、幸せな家庭を築く夫婦のコミュニケーションという冊子の紹介をしました。この冊子では、自分も相手も大切にする自己表現、アサーションなどについても取り上げられていて、例えば怒りをテーマにした節では、怒りの本質、怒りの感染力、相手の怒りへの対処、自分の怒りへの対処などが述べられていますが、心理学の先生が書いていて、夫婦関係だけでなく、他の人間関係にも応用できそうな内容です。私は、婚姻届提出時などにこのような冊子を配布するか、あるいはこうした内容で講習をするのもよいのではないかと思います。
国のこども政策の新たな推進体制に関する基本方針では、「家庭が基盤。親の成長を支援することが、こどものよりよい成長につながる。こどもの困難は、こどもの要因、家庭の要因、家庭内の関係性の要因、環境の要因等、様々な要因が重なり合って表出。保護者自身にも支援が必要」と掲げられています。親の成長は子どもにとっても重要で、そのためにも、まず家庭内コミュニケーションの啓発が必要だと思っています。
そこで質問は、家庭内コミュニケーションの啓発についてどのように考えているのか、お伺いいたします。
次に、保育士体験、赤ちゃんふれあい体験等についてお伺いします。
私は以前、芝地区総合支所で行われていた「未来の親体験~ここから始まる赤ちゃんふれあい事業~」について取り上げさせていただきました。これは、乳幼児とその母親たちが中学校等を訪問し、実際に乳幼児と接する機会をつくることで、親になることをイメージできるような仕組みをつくるという内容でした。大変好評でしたので、私はこれを芝地区だけでなく、もっと全区的に拡大できないかと提案したところ、地域学校協働活動推進事業の出前事業の一つとして実施されましたが、コロナ禍で接触を控えるといったことなどがあり、実施されなくなりました。
一方、逆に中学生等が保育園や幼稚園に行って保育士や幼稚園の先生体験をすることで、親になることの学びにつなげられないかと思っております。中学生等による保育士や幼稚園の先生体験は、職業体験という位置づけかと思いますが、園、園児、体験した中学生等のいずれにとっても、それぞれに効果があることだと思います。
園にとっては、ふだんは園児と保育士、保護者という大人しかいないので新鮮でもあり、園児の成長した未来の姿を見るような経験になるかもしれません。園児にとっても、自分の兄弟とは年の離れた、ちょっと大きいお兄さん、お姉さんと触れ合う機会になり、また中学生等にとっては、自分の過去を振り返る機会になったり、未来の親体験のように感じるかもしれません。職業体験として希望する以外の人にも広げて、多くの人が体験してみるのがよいのではないかと思います。
ただ、難しいのは、必ずしも全員が親になるわけではないというところですが、親になった人からは、親になる前にそんな機会があればよかったという声をよく聞きます。このような取組は、直接親になることの学びではありませんが、考えてみるきっかけになるのではないかと思います。
そこで質問は、自分の成長過程を実感し、親になる体験をするため、中学生等による保育士体験や赤ちゃん触れ合い体験等を進めるべきと考えますが、区長、教育長はどのように考えるのか、お伺いいたします。
以上で質問を終わります。御清聴ありがとうございました。