土屋 準(つちや じゅん) 議会報告

定例会報告

平成23年度 土屋 じゅん 定例会での発言

◯八番(土屋 準君) 平成二十三年第四回港区議会定例会にあたり、自民党議員団の一員として、当選以来のさまざまな機会を通して感じた区政の基本的課題や、視察を通して感じた課題を中心に、区長並びに教育長に質問させていただきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
 それでは、質問に入らせていただきます。
 最初に、特別区の制度と都心区の課題についてお伺いします。
 初めに、今後の特別区制度のあり方についてです。大阪では先日、府知事選挙、市長選挙のダブル選挙が行われましたが、その際、争点になったのは、いわゆる大阪都構想でした。これは東京都をモデルに、政令指定都市の大阪市と堺市を解体して特別区に再編することが柱で、都道府県と政令指定都市の役割分担など大都市制度のあり方に一石を投じました。
 ところが、東京都の特別区制度を見ると、これまでさまざまな課題が指摘され、幾多の変遷をたどってきました。むしろ特別区制度のあり方が問われているところであります。そもそも東京の区は、明治十一年に芝区、麻布区、赤坂区など十五区が設置されたことに始まります。ちなみに、東京の区は、その後さまざまな変遷をたどることになりますが、翌年開設された公選の区議会は、途絶えることなく今日まで引き継がれ、東京大都市地域の基礎的な自治体の機関として機能し続けています。この十五区を市域として旧東京市が発足したわけでありますが、この市域はほぼ現在の都心六区程度に相当する地域であり、現在の東京二十三区に相当する地域には、ほかに六つの郡が置かれました。この郡がそれぞれ市になっていれば、東京二十三区に相当する地域には七つの市が誕生したことになりますが、そうはなりませんでした。昭和七年には旧東京市に隣接郡が編入され、大東京市が誕生したのです。その後、都制の施行、戦後の特別区の設置、そして、先人たちの自治権拡充の歩み等の歴史を経て、今日の姿となっているのであります。
 さて、今後の特別区制度のあり方については、さまざまな提言等がなされています。「都の区」という制度を廃止して、それぞれ基礎自治体である「東京○○市」に移行する構想、特別区を大規模な基礎自治体を含めて再編する構想、新たな東京市を設置する構想等があります。こういった経緯を踏まえ、区長は、今後の特別区制度のあり方についてどう考えますでしょうか。
 次は都心区の課題についてです。
 二十三区は常に一律にとらえられがちに見受けられますが、港区などの都心区と周辺区とでは地域特性に大きな違いがあると感じます。東京大都市地域は、生活圏の拡大により、もはや東京都の枠を超え、隣接県にまで広がっている感があります。埼玉都民、千葉都民という言葉がありますが、都外から都心部に通勤・通学する人口の多い地域と都内の周辺区との間で、その地域特性はどの程度違うのでしょうか。むしろ二十三区内の都心区と周辺区との間の違いの方が大きいのではないかと思われます。それでも二十三区を常に一律にとらえる区分には限界を感じるところであります。
 ところで、各区の社会的、経済的、地理的諸条件はそれぞれ異なるのはもちろんですが、その中でも都心区は、その立地条件に起因するさまざまな特徴を持っています。昼間人口への対応やヒートアイランド対策、災害時の帰宅困難者対策など、都心区には共有する課題が多くあると思います。かつて都心六区等で固定資産税や相続税の負担軽減等に向けて取り組んだことがありました。今後も都心区が共有する課題に対して協同して取り組む体制が必要と考えますが、区長のお考えはいかがでしょうか。
 次に、人事制度についてお伺いします。
 まずは特別区人事委員会制度についてです。特別区の人事行政は、二十三特別区が一部事務組合方式により連合して設置した特別区人事委員会とそれぞれの区という主体により担われています。先般、特別区人事委員会から給与勧告がなされましたが、これは二十三区均一に民間従業員の給与水準と均衡させるものであります。しかしながら、これも都心区と周辺区では給与水準は異なると思われますので、二十三区均一に取り扱うのは合理性を欠くのではないかという疑問があります。また、昇進制度の一環として管理職選考の制度がありますが、これについても特別区全体で行うため、区ごとでは必要な管理職の数に対して合格者が足りなくなるという事態も起き得ます。このような現状を踏まえ、特別区人事委員会が二十三区を一体として取り扱う制度の課題について、区長はどう考えますでしょうか。
 次は、専門性を重視した任用についてです。
 先日の総務常任委員会で、次期行政情報システム開発遅延問題をめぐる議論があり、その中で、専門性の高い職員の育成・活用の課題が浮き彫りになりました。しかしながら、現在の職員の人事運用はゼネラリストの育成・活用を主眼としており、スペシャリストの育成は重視されてこなかったように見受けられます。現在の公務員制度では、一部に経験者採用や中途採用、任期付採用などの仕組みはあるものの、基本的には新卒時の採用試験により採用し、数年でポストがかわる定期異動が広く行われているのが一般的であり、この定期異動は周期が民間企業よりも短いのが特徴です。こうした頻繁な定期異動のメリットとしては、結果的に幅広い経験を積ませることになるため、ゼネラリストの育成を行うのに適している。常に新しい仕事にチャレンジさせることにより職員の活性化を図れる。利害関係者との癒着による不正を未然に防止するといった点が指摘できます。一方、現行の定期異動は人事ローテーションという観点から行われるため、長期的な育成を要する高度の専門性を持った人材が育ちにくいという問題が生じています。
 情報システムの分野に限らず、今後の行政事務の高度化が見込まれる時代には、むしろスペシャリストの育成・活用を主眼とすべきではないかと考えます。しかし、専門的人材を一つの区だけで運用するのは合理的ではないという課題もあります。もし特別区人事委員会体制から脱却できないのであれば、逆にそのメリットを活用して、二十三区全体に専門職人材市場を創設し、フリーエージェント制などの仕組みを参考にして、区の枠を超えた人事運用を行うといった工夫も考えられます。このような観点を踏まえ、専門性を重視した任用についての区長のお考えはいかがでしょうか。
 次に、総合支所制度についてお伺いします。
 総合支所制度の意義と課題についてです。平成十八年四月に行われました区役所・支所改革により導入された総合支所制度は、港区の大きな特徴となっております。それにより、より便利で、より身近な区政が行われるようになりました。区への申請・相談は、原則としてすべて地区の総合支所で受け付けられ、町会・自治会などのほか、その地区で活動する企業、NPO、ボランティアなど多様な団体や個人との協働による地域活動の支援などの充実がなされました。さらには、地域の区民の声を把握し、地域の区民等との協働により地域における独自の計画づくりが実施されるという、従来にはなかった新しい機能を持つようにもなりました。そして、制度導入から三年を経た平成二十一年四月に見直しが行われ、現在に至っているわけであります。
 しかし、この総合支所制度にも課題が考えられます。その一つとして、総合支所長職と支援部長職の兼任による不都合は生じないでしょうか。総合支所長が常時支所にいないという区民の声も聞かれます。そのためには総合支所長職と支援部長職を分離するという方法もあります。例えば、支援部長には専門性を重視する観点から、区内外からの公募制を導入する案、総合支所長にはこれまでの地域の区民との長いかかわりを重視する観点から、再任用職員を充て人件費を抑制する案等が考えられます。一方、総合支所長職と支援部長職を分離すれば部長級職員が増えてしまうという問題点もあります。このような点を踏まえた上で、総合支所制度の意義と課題についてどう考えますでしょうか。
 次に、基本計画等の策定のあり方についてお伺いします。
 このたび、公募区民によるみなとタウンフォーラムや、各総合支所の区民参画組織の区民等の提言や意見を踏まえ、港区後期基本計画・実施計画の素案がまとめられています。現行の基本計画は、平成二十一年度から平成二十六年度までの六カ年の計画期間を前期と後期に区分して平成二十一年に策定したもので、この計画では、計画期間の三年目にあたる平成二十三年度に、計画策定以降も刻々と変化する社会経済情勢を迅速かつ的確にとらえ、新たな課題に対応するために見直しを行うこととしていたものです。
 そこで、まず区民参画の方法についてお伺いします。
 今回の見直しにあたっては、平成二十二年度から一年三カ年にわたって、公募区民により、区政の分野ごとの六つのグループで構成されたみなとタウンフォーラムと、総合支所で地域の課題解決等の検討を行う区民参画組織において、基本計画の分野別計画及び地区版計画書の見直しに向けた検討が行われました。その結果、本年七月にみなとタウンフォーラムの六グループと五地区の区民参画組織から、区への提言として、それぞれの検討結果が区長に提出されました。この提言は、区民の方々がこれまで地域の現状や課題等を熱心に議論、検討してきた成果であると思います。
 区民が区政に対して意見を述べ、区政に参画するということは、地方自治では重要なことです。区側としても、区民の意見を的確に把握することは、円滑な区政運営を図る上で必要なことと思われます。しかしながら、単に希望者を参画させるだけでは、いわゆる声の大きい人の意見ばかりが取り上げられ、サイレントマジョリティーの声が反映されないのではないかという懸念もあります。また、特定の利益、あるいは特定の政策実現を求めるグループ等が利益誘導、政策決定の誘導を行うことも考えられます。区でも、より多くの区民の声を計画の見直しに反映させるため、区民世論調査をはじめ、各行政分野での調査結果を活用するとともに、総合支所では、それぞれの地区内の区民を対象とした地区版計画書に関する区民意識調査を実施し、地域の課題についての意見や要望を聞いているとのことではありますが、区民参画に関しては、そういった問題に対する対応を十分に講じていかなければならないと思います。区長は、基本計画等の策定における区民参画の方法の課題についてどう考えますでしょうか。
 次に、計画の期間についてです。
 基本計画は六年の期間とし、三年で後期見直しをしています。ところが、政治過程の観点からすれば、計画の期間は区長の任期である四年とすべきではないかという考え方があります。選挙により区民の信託を受けた区長が、公約実現のため基本計画を策定すべきであって、そのためには計画の期間は区長の任期に合わせるべきではないかというものです。一方、計画期間のサイクルは継続的なもので、区長の任期に合わせるのはタイミングが難しいという問題も考えられます。そのような中で、基本計画の期間を六年としている意義はどういうものなのでしょうか。
 最後の質問は、あきる野市の「みなと区民の森」の活用について、教育長にお伺いします。
 私たち区議会は、十月二十一日にあきる野市の区民の森を視察してまいりましたが、整備開始から四年がたった山を登りながら、その自然に触れてきました。これまでの間、区は、あきる野の間伐材を施設建設に利用するなど、森林整備に対する重要性を広く区民に周知してまいりました。また、NPO法人あきる野さとやま自然塾の皆さんのご努力により、あきる野の地元の方々からもご賛同をいただき、大変な協力関係が築かれております。
 この貴重な「みなと区民の森」をもっと多くの区民、とりわけ子どもたちに活用してもらいたいと思いますが、平成二十一年と平成二十二年の利用実績を見ますと、保育園・児童館の利用は多いのに対し、学校は御田小学校、青山小学校の二校となっております。学校の利用が進まないのは、新学習指導要領の実施により年間の授業時間数が大幅に増え、月二回土曜日にも授業を行っている状況の中で、「みなと区民の森」を活用しようとすると、丸一日かけなければならないのでは、学校としても活用したくてもできないといった事情があるのではないかと思います。
 しかしなから、先ほども申し上げましたが、あきる野さとやま自然塾の皆さんのご努力により、区とあきる野の近隣住民の皆さんとの強い協力関係が築けているという現状があります。自治体間の交流事業には、役所のみならず、このような地域住民の協力関係が重要な役割を果たすのではないかと思います。この協力関係をより強固なものとし、将来にわたってあきる野市と深い交流関係を続けていくためには、「みなと区民の森」を十分活用していくことが必要と考えます。特に、未来を担う子どもたちには、今以上に活用してほしいと思います。学校の教育活動の一環としての活用が難しいとしても、地域や保護者の方々と協力して、もっと小・中学生が活用する機会を多くする工夫が考えられないでしょうか。教育長のお考えをお伺いいたします。
 質問は以上ですが、先般、武井区長は、田町駅東口北地区に整備を予定していた文化芸術ホールに関し、長引く景気の低迷や大震災の影響で将来の区税収入の動向が不透明さを増していることから、整備を一たん中止することを表明されました。ここに至るまで区民参画組織での議論が重ねられ、多くの区民の皆様方がかかわってこられ、また、整備を心待ちにしていた区民の方々も数多くおられただけに大変残念であります。現下の社会経済状況をかんがみるに、私たち自民党議員団は、武井区長が下された苦渋の決断を重く受けとめ、支持するものでございます。今後も十一人一丸となって区長を支え、港区の発展に一層邁進することをここに表明いたしまして、質問を終わります。ご清聴ありがとうございました。

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