土屋 準(つちや じゅん) 議会報告

定例会報告

平成24年度 土屋 じゅん 定例会での発言

◯八番(土屋 準君) 平成二十四年第四回港区議会定例会にあたり、自民党議員団の一員として、区長及び教育長に質問します。
 本日は、東京都知事選挙が告示されました。また、十一月十六日には衆議院が解散され、今後の我が国の行方を左右する総選挙が都知事選挙と同時に行われることになりました。この選挙に至るまでの間、都政や国政においては、さまざまな政策に関する議論が行われてきましたが、区政にも影響する課題も多く、今後の議論が注目されるところであります。
 それでは、初めに特別区制度と都心区の課題についてお伺いします。
 さきの国会で大都市地域における特別区の設置に関する法律が成立し、東京以外にも特別区が設置できるようになりました。これを機に、現在、特別区制度のあり方が問われており、さまざまな課題も取り上げられています。例えば、今回の法律では、人口二百万人以上の政令市と隣接自治体に特別区を設置する規定が設けられましたが、逆に特別区を市にする規定はありません。一般的な自治制度となるのであれば、一方通行ではなくて、特別区が一般市になる規定もあわせて整備することが望ましいのではないかといった考えもあります。いざとなれば特別区から離脱して市になり得るという制度もあれば、実行に移さないまでも、都区制度の協議にあたっての交渉の手段になると考えられます。
 特別区の制度の課題としては、その根幹をなす都区財政調整制度があります。調整税を特別区と東京都で五五%と四五%で配分する仕組みがありますが、この税は、そもそも市町村としての二十三区の中から生み出される市町村財源であるので、その区域で使われるべきものです。特別区分の五五%については、当然各区に配分されますので、区民のために使われるのは明白です。けれども、東京都分の四五%については、消防や下水道など二十三区の区域を一つの市とみなす大都市事務として、市の立場で東京都が担うものであります。ところが、この大都市財源が府県財源と一体となってしまって、どのように使われているかわからないという問題が挙げられます。
 調整財源としては、固定資産税や住民税法人分が都税として徴収されています。これは企業の立場からすると、企業が立地している自治体に対して、税収に貢献するということでの地元貢献が直接的にはできないことになります。一方、自治体の立場からすると、地域の活性化のために企業などの事業所を誘致する際に、通常の自治体ですと、税制面での優遇措置を設けたりするということがあると思いますが、特別区には課税権がないため、そうした手段にもなり得ません。こうしたことが相まって、事業所との協力関係、連携関係、地域の発展のために一緒に協力していくという関係が築きにくいということがあります。
 二十三区における都心区の特有性を考慮することも必要だと思います。これまでの歴史的経緯から、二十三区は常に一律に捉えられがちですが、港区などの都心区と周辺区とでは地域特性に大きな違いがあると感じます。東京大都市地域というのであれば、それはもはや生活圏の拡大により、東京都の範囲を超え、隣接県にまで広がっている現状です。埼玉都民、千葉都民という言葉がありますが、都心部に通勤・通学する人口の多い他県の地域と都内の周辺区との間での地域特性の違いよりも、むしろ二十三区内の都心区と周辺区との間の違いの方が大きいのではないかと思われます。このように特別区制度に関してはさまざまな課題がありますが、こうした観点を踏まえ、今後の特別区制度のあり方について、区長はどのように考えますでしょうか。
 次に、区長部局と教育委員会との連携についてお伺いします。
 教育行政に関しては、国では内閣の統括のもとに文部科学省が担っていますが、自治体では教育委員会制度がとられています。制度自体は法律で決まっていて、その意義は、政治的中立性の確保、継続性・安定性の確保、地域住民の意向の反映などであり、首長からの独立性に制度の特性があると理解しています。
 そして、教育委員会の事務執行責任者である教育長は、首長は直接選任できず、あくまで教育委員の一人として任命され、教育長としては教育委員会が任命する形となっています。このため、選挙で有権者から負託された首長の意向の反映は、教育委員の任命という人事権や予算編成権を通して行われているのが現状です。
 このたびの衆議院選挙に際して策定された自民党の政権公約では、いじめ問題でも批判された現行の教育行政システムを是正するため、首長が議会の同意を得て任命する常勤の教育長を教育委員会の責任者とするなど、教育委員会制度を抜本的に改革するとしています。教育委員会制度のあり方自体は、国の方向性によるしかないと思われますが、現場を担う自治体としては、定められた範囲内で、でき得る工夫をしていくことが必要だと考えます。現状では、区長部局と教育委員会との役割分担や連携についてさまざまな課題が見られます。
 例えば、同じ目的のものを区長部局と教育委員会が担っているというものがあります。放課後児童健全育成事業でも、小学校によって教育委員会が所管する「放課GO→」と、区長部局が所管する「放課GO→クラブ」があり、区民にとってわかりにくいものとなっています。学校のクラブ活動に関しても、教員の負担が大きく顧問のなり手がいないので、教育委員会だけで対応できないのであれば、区長部局の協力を得て、外部から人材を招くなどの対応をとれないかという声もあります。
 健康増進を目的とする施設は、区長部局が所管する施設を利用していますが、生涯学習推進課が所管するスポーツセンターなどの施設でも利用できるようにするなど、施設資源を有効に使っていくことも求められているのではないかと思います。隣接する施設であっても、教育委員会の所管と区長部局の所管とに分かれていると融通できないということになりますし、教育委員会事務局に所属する職員には区長が指示できないということになります。しかし、区民から見れば、同じ区の施設であり、同じ区の職員ではないかということになります。
 また、従来から我が会派は文化・スポーツに関する事務などの区長部局への権限移譲を含む体制整備を主張していますが、オリンピック招致や国体推進などの時期を控え、全庁的に取り組む体制を整えた方が力を発揮しやすいのではないかと思います。
 そこで、区長部局と教育委員会とで連携のあり方を見直し、教育施設の有効利用や職員の兼務といった物的資源・人的資源の共有を図るなどの工夫ができないかと思います。このような観点を踏まえ、区長部局と教育委員会の連携のあり方についてどのように考えますか、教育長に伺います。
 次に、まちづくりと居住環境についてお伺いします。
 「まちは人が住んでこそまち」、本年六月の第二回定例会で区長からこの言葉を伺いました。港区では最近、大規模開発事業が多数計画されています。愛宕地区でも、世界貿易センタービル周辺も工事に十二年の長い期間をかける規模の再開発が予定されていますし、虎ノ門でも大きな事業が計画されています。こうした開発事業は地域のにぎわいや活気に結びつく面もありますが、周辺に住み、利用する区民にとっては、大きな環境の変化をもたらすものでもあります。「まちが発展するのはいいが、人が住みにくくなってしまうのではないか」、こうした不安の声も地域住民から聞かれます。
 大規模開発事業における環境対策については、特に日影、電波障害、風害、景観などは、建物が建ってしまえば長期にわたって変化が続くものであり、開発計画が持ち上がった周辺に住む住民にとっては、最も関心の高い事項だと思います。この中で、日影については、規制地域が定められ保護される地域が決まっていますし、電波障害については、共同アンテナの設置など事業者によって代替措置が実施されるなど、開発の影響の緩和が図られます。また、景観については、周辺に充実した緑化が行われたり、都市的な空間、デザインが施されたりするということで、当初は変化に戸惑うこともありますが、時間とともに地域になじんでいくことも考えられます。しかし、風については、「あの建物ができてから風がきつくなった」とか、「昔はこんなではなかった」という話が長く言われ続けます。
 「ビル風」という言葉もよく耳にします。区外ですが、高齢者が強風で転倒して骨折した事例があったとも聞いています。世界貿易センタービル付近は、この地区でも特に歩行者が多い地域です。飲食店を中心とした商店街もあります。商店街では店が道路に面していて、店の中の人の気配が道を歩いていても感じられ、それが一体となってにぎわいが醸成されます。もし風が強く、道路に面して商売ができないということになれば、店舗が建物の中に取り込まれたり、地下に移ったりということにもなり、まちの風情が大きく変わることにもつながります。まちのにぎわいの維持のためにも、街路の風環境が大きく変わることは避けなければならないと考えます。
 ビル風は、上空を吹いてきた風が高層建築物の壁にぶつかって壁に沿って下に吹きおりることから生じます。なるべく強い風が大きな壁に当たらないように、また、周辺の歩行者に吹きおりた風が直接当たらないように、建物の配置や形状などを検討している早い段階から、事業者に配慮を要請することが必要です。ビル風対策の観点から、計画の早い段階で事業者に対して強く指導を行っていただきたいと思いますが、どのようにお考えでしょうか。
 一方で、地価の高い港区では建物の配置や形状での配慮は、計画敷地の広さや形状にかなり制約されます。こうした場合、風環境対策として大きな常緑の植栽を施し、葉の抵抗で風を弱め、歩行者に当たらないようにする対策がとられると聞いています。交通・環境等対策特別委員会で大規模開発の都度、説明を受ける環境アセスメント手続では、事業者は防風植栽で影響を抑えた後の風環境を実験模型等で予測し、その結果を区に示して、建物が建つ前と風環境が大きく変わらないことを説明してはじめて工事に入れることになっていると聞いています。防風植栽は建物の配置、形状等の配慮と比べれば、対策の効果は限定的で、不確実であることは否めませんが、日本の経済の中心を担う港区では、このような対策も一定程度許容せざるを得ないことは理解できます。
 しかし、道路を歩いていると、風が強く当たる植栽には木そのものが傾いてしまっていたり、葉が成長できず、中心の幹が見えるくらい葉がはげた状態になっていたりする木を見かけます。このような状態になると、今後その木が枯れてしまうかもしれませんし、そもそも風を防ぐという機能は果たせないのではないかと思います。実際に区内で防風植栽が強風で倒れた例があるとも聞いています。植栽による風対策を許容するのであれば、地域の風環境を保つためにも、こうした対策が有効なものになっているかどうか、その効果が長い期間持続するのかどうかを建物の竣工後にきちんと確認しなければなりません。
 区は現在、竣工一年後に事業者から事後調査報告書の提出を受け、風環境の確認を行っているとのことです。その手続の中で風環境に問題がある場合に、区の指導を受けて防風植栽の植えかえや、土壌改良等による防風植栽の育成対策が事業者によって行われており、この事後調査報告書の手続が一定の効果が上げていることをわかります。一方で、公表された事後調査報告書を見ると、風環境は着工前の予測どおりに低減していないが、これから防風植栽を育成させることで低減させるという趣旨の記述をしている物件が見受けられます。区は、こうした物件について、その後、防風植栽が予定どおり定着し、育っているのか確認し、風環境対策の確実な実施を担保する必要があるのではないかと思いますが、どのようにお考えでしょうか。
 都市再生緊急整備地域の指定もあり、今後も区内で大規模開発計画の提出が続くと思います。こうした開発計画については、地域の活性化を目指しつつ、事業者には区民の日々の生活への配慮を求め、区長が基本計画に掲げられた「区民の誰もが安全に安心して生活することができる活力ある港区」が実現されることを期待します。
 次に、自転車利用環境の整備についてお伺いします。
 港区では、在住者と在勤者がさまざまな交通手段を利用していますが、自転車の利用については在住者の割合が大きくなっています。よって自転車利用環境の整備を図ることは、住みやすいまちづくりにつながることになると考えます。
 自転車は、子どもから高齢者まで、日々の通勤・通学や買い物など、手軽に利用される交通手段です。また、地球温暖化等環境問題に対する意識が高まる中、環境の負荷が小さい交通手段として見直され、さらに、近年の健康志向の高まりとともに、その利用が拡大しています。
 一方、自転車に関する事故と交通規制に関する道路交通法の変遷を見ると、昭和四十年代からのモータリゼーションの進展により、自転車が関係する交通事故が急増したことを受け、昭和四十五年に道路交通法が改正され、自転車の歩道通行を可能とする新たな交通規制が行われることになりました。これにより、自転車と自動車の走行空間の分離が進み、自転車が関係する交通事故は減少しました。しかしながら、近年、自転車利用者の増加とともに、交通事故全体に占める自転車関連事故の割合は増加しています。
 こうした状況を受けて、平成二十年に歩道上の安全確保と自転車が関係する自動車事故の減少を目的として道路交通法が改正され、自転車の歩道通行可能要件が明確化されました。さらに、平成二十三年に警察庁より「良好な自転車交通秩序の実現のための総合対策の推進について」の通達が出され、自転車利用者のマナー向上はもとより、歩行者、自転車、自動車がともに安全で安心して通行できる自転車走行空間を創出していく必要が高まっています。
 このような中、国土交通省と警察庁は、「安全で快適な自転車利用環境の創出に向けた検討委員会」を共同で設置し、本年四月に「みんなにやさしい自転車環境|安全で快適な自転車利用環境の創出に向けた提言|」がまとめられました。
 また、東京都では、これまで整備してきた百キロメートルの自転車走行区間に加え、二〇二〇年の東京計画において、平成三十二年までに新たに百キロメートルを整備することとしています。この計画を実現するため、道路の幅員や利用状況に応じて、車道の利用を基本とした自転車道や自転車レーンなどの整備手法と安全性・利便性向上の視点から選定した優先整備区間などを取りまとめた「東京都自転車走行空間整備推進計画」が本年十月に策定されました。
 港区においては、自転車等の適正なあり方や走行環境の拡大など自転車等に関して総合的な検討が行われ、自転車法に基づき、「港区自転車等総合基本計画」が平成二十年に策定されました。本年六月には、学識経験者、国土交通省、東京都、区内の各警察署交通課長、各交通安全協会会長で構成される検討委員会を設置して検討を行っていると聞いています。
 港区の人口は平成八年以降増加傾向にありますが、今後も増加が見込まれており、自転車利用者も増加しています。同時に区内の交通事故全体に占める自転車事故の割合も増加しており、特に交差点内や幹線道路での事故が多く発生しています。このような港区の自転車利用環境の状況を踏まえると、自転車利用者のマナー向上を図るというソフト面とともに、自転車走行空間の整備というハード面の対策が必要と考えます。しかしながら、区内で自転車走行空間が整備されている箇所は少なく、連続性も確保されていません。
 そこで質問ですが、今後、区は、自転車走行空間の整備について、どのように取り組んでいくのかお伺いします。
 最後に、本年第三回定例会での議会同意を得て教育委員に任命され、十月十二日の教育委員会で新たに教育長に任命された小池眞喜夫新教育長に、今後の教育行政の方向性についてお伺いします。
 このたびの衆議院選挙に際して策定された自民党の政権公約では、世界トップレベルの学力と規範意識を備え、歴史や文化を尊重する態度を育むために「教育再生」を実行するとし、世界のリーダーとなる日本人の育成、教師力を向上し、適切な教育内容を確保。単線型でなく、多様な選択肢(複線型)を可能とするため、六・三・三・四制の見直し。我が国を愛する心と規範意識を兼ね備えた教育。世界トップの人間力と学力を実現するための教育投資の充実。いじめをなくし、一人ひとりを大切にするいじめ防止対策基本法の制定。安心して夢の持てる教育を受けられる社会の実現といった政策を考えています。
 一方、近年の港区における教育行政については、小中一貫教育の推進など、大きな変化が見られていると思います。このような中、新たに教育長に就任されたわけですが、これまでの経緯を踏まえ、今後の教育行政の方向性についてどのようにお考えか、教育長にお伺いします。
 以上で質問を終わります。ご清聴ありがとうございました。

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